▼ております→そういうことになっている
【A:問い合わせは ご遠慮ください】
客は問い合わせすることを遠慮をしてくれ
【B:問い合わせは ご遠慮いただいております】
ルールとして、客は問い合わせすることを遠慮をするということになっている
※遠慮をするは、遠回しに「しない」を表す。
↑
この2つのビジネス敬語の違いを比較すると、下の通り。
【A:〜ください】命令・お願い
【B:〜いただいております】事実・ルールの説明
▽比較から見えてくるもの
Bの「事実の説明」というのが、日本人の意識において重要です。
「ております」という文は、「そういうことになっている」という説明です。
「誠に申し訳ございませんが、店内での飲食はご遠慮いただいております」という文であれば、「ルール上 店内での飲食は遠慮しなければならない」という意味合いでの説明になります。
▼「ております」の効果
・ルールに従いがちな日本人の心理に響く
・押し付け度が下がり、責任を背負いすぎなくなる
・否定=変人と思わせる
↑
主に この3つの効果があると言えます。
▽ルールに従いがちな日本人の心理に響く
なぜ、「ご遠慮いただいております」が ビジネス敬語表現として多用されているかの1番の要素が「ルールに従いがちな日本人の心理」をついていることにあると考えられます。
そういうルールなので、守るかどうかはキミ次第という提示でもあります。
事実・ルールの説明である「ご遠慮いただいております」と言われたら、そのルールを知ることになります。
【ルールを知った人が思い浮かぶ選択肢】
・ルールを守る=遠慮する
・ルールを破る=遠慮しない
まっとうな人間であれば、できるだけルールは破りたくないと思うので、結果的に、お願い以上の効果になることもあります。
▽押し付け度が下がり、責任を背負いすぎなくなる
【A:〜ください】という文は、命令・お願いなのですから、物を頼む意識になります。頼むとなると押し付け度が高いので、「頼んだ責任(命令した責任)」が個人差あれど 生まれます。
しかし、【B:〜いただいております】という事実・ルールの説明であれば、文の構造としては頼んでいないことになります。そのため、「頼んだ責任」が個人差あれど 前者よりも少なくなります。
責任を背負いたくない人のほうが一般的ですので、無意識で 【A:〜ください】よりも【B:〜いただいております】を選ぶというのは十分ありえます。
🤔「文の構造の話であって、気持ちとしては"頼む気持ち"を持って発しているコトバではないのか?」
👨「そのとおりです。あくまで構造上はそうですよってだけです。しかし、構造上"頼む気持ち"が出ている文と出ていない文では感覚が異なると考えています。」
🤔「まあたしかに〜、感覚レベルで、AよりBのほうが押し付け度が下がるというのはなんとなく、同意できるかも。」
▽否定=変人と思わせる
「〜ております文」の例として【彼はすでに着いております】という文を考えてみましょう。
「彼はすでに着いております」というのがウソでないかぎり、「彼が 指定の場所に、すでにいる状態である」というのは変えようのない事実です。
ただの事実の説明なので、これに対して
😡「まだ、着いているワケないだろ!」
と 否定しながら怒る人は普通いないでしょう。逆に否定するのでれば、変人という見方をされるので、怒らないのが普通です。
もちろん、5分前に東京を出発した人が、もう北海道に到着したなんていうのは、99%以上はウソなので、それに対して😡「まだ、着いているワケないだろ!」と否定するのは、不思議ではありません。※しかし、そういう話をしているわけではない。
▼「ています・ている」なども同じ効果
「ております」と同じように、「ています」「ている」と言い換えても同じ効果を得ます。
・彼はすでに着いています
・この地域では、夏に祭りが開かれている
・この業務については田中が担当している
【この地域では、夏に祭りが開かれている】
こう聞くと、この地域の文化として、祭りをすることが決まっているのだなあと考えるのが普通。
そんなワケないと怒る人は普通いないでしょう。仮に祭りの開催に異を唱えるにしても、勇気・明確な理由・そのデータなどがいります。
【この業務については田中が担当している】
これに対して、「田中なわけないだろ!」と怒る人は普通いないでしょう。
▼おわりに
2023.9月末時点で、「事実・ルールを述べる」という部分に焦点を当てる解説は、割合としては少ないです。
【解説でありがちな説明】
・ご遠慮ください=指示(命令)
・ご遠慮いただいております=肯定表現
↑
上のような比較をした上で、「肯定表現だから」否定感が和らぐみたいな説明を見たことがあります。
※いわゆるマナー本やマナー解説サイトでの解説。
もちろん、「否定感が和らぐ」ための要素の一つして「肯定表現」を理由に挙げることが間違いではありません。
ただし、ルール・掟に従いがちな日本人に対して効果的な「事実・ルール述べ」の効果を説明していないのは問題だと思います。「〜ております」が使われる理由として考えるべきは、「事実・ルール述べ」の部分ですからね。
【使用割合は ほぼ五分】
Google 20231004
"ご遠慮ください"約 18,300,000 件
"ご遠慮いただいております"約 1,800,000 件
【記事編集用Link】https://blog.hatena.ne.jp/peaceheart/onbin.hateblo.jp/edit?entry=26006613515729506
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