和語の里(Wagonosato) - 日本語・データ化・考察 -

やまとことば・和語・日本語に関する情報をデータ化・日本語の問題点解説。語彙力・難読漢字クイズなどによる教養アオリの否定など。

【え】二重(ふたえ)・百重(ももえ) など、どれだけ知ってる?【漢数字+重(え) 一覧】

f:id:peaceheart:20220210042429j:plain


二重(ふたえ)まぶた」

紙一重(かみひとえ)

 などのコトバを耳にしたり使ったりしている人は多いと思います。

 

 それらに含まれる(え)よりも、(ジュウ)という読みが一般的に多く使われ…

(え)」訓読み

(ジュウ)」音読み

 という分け方になります。

 

 漢数字「(1)」「(2)」の後ろに、訓読み(え)を つけ、一重(ひとえ)」「二重(ふたえ)などの形をとって使われます。

 この記事は二重(ニジュウ)三重(サンンジュウ)などの音読みとは異なる、「漢数字+重(え)」を まとめた記事なります。

 

 

▼「漢数字+重(え)」 まとめ

1一重(ひとえ)」・2二重(ふたえ)・2+し二し重(ふたしえ)」・3三重(みえ)」・5五重(いつえ)

7 七重(ななえ)」・8八重(やえ)」・7+8七重八重(ななえやえ)」・8+8八重八重(やえやえ)・9九重(ここのえ)

10十重(とえ)」・20二十重(はたえ)」・10+20十重二十重(とえはたえ)

100百重(ももえ)」・500五百重(いおえ)」・800八百重(やおえ)

 

 

▽「漢数字+重(え)」の 意味 まとめ

 先ほど紹介した「漢数字+重(え)」のコトバたちの意味を辞書で調べ、簡易的にまとめました。ただし、「三重四重」のみ宮本武蔵:05 風の巻」から抜き出しました。

【1】
一重(ひとえ)」1つ重ね。特殊:重ねの否定。特定:花ビラ・まぶた。

【2】
二重(ふたえ)」2つ重ね。特定:まぶた・腰の曲がり。
二し重(ふたしえ)」《「し」は強調の意を表す助詞》で、「二重(ふたえ)」と同じ意味。

【3】
三重(みえ)」3つ重ね。特定:模様の織り出し・織物。

3+4】
三重四重(みえよえ)」※推測される意味としては、3つか4つに重ねたものを表している。

【4】
x (辞書において意味解説や見出しが存在しない)

【5】
五重(いつえ)特定:衣・扇。


【6】
x (辞書において意味解説や見出しが存在しない)

【7】
七重(ななえ)」7つ重ね。特殊:たくさんの重ね。

【7+8】
七重八重(ななえやえ)」特殊:数多くの重ね。

【8】
八重(やえ)」8つ重ね。特殊:数多くの重ね。特定:花ビラ。

【8+8】
八重八重(やえやえ)」特殊:幾重の重ね。

【9】
九重(ここのえ)」9つの重ね。特殊:いくつもの重ね。特定:宮中。

 

10 十重(とえ)」10の重ね。

20 二十重(はたえ)」特殊:幾重の重ね。

10+20 十重二十重(とえはたえ)」特殊:幾重の重ね。

 

100 百重(ももえ)」特殊:数多くの重ね。

500 五百重(いおえ)」特殊:幾重の重ね・非常に遠くの隔たり。

800 八百重(やおえ)」特殊:幾重の重ね・非常に遠くの隔たり。その場所も指す。

        ↑

 これらは、「精選版 日本国語大辞典デジタル大辞泉に収録されているもの」のみを抜き出しまとめました。

 辞書上の表現だと冗長になるため、「」などの表現は「〜の重ね」などと表現しています。

 漢数字「X」+(え)」の後ろには、「Xつ重ね」「X回重ねる」の意味が辞書にあるときに、「Xつの重ね」などのように記しています。

 「特殊」の部分には、その数「七重まらば7」という7という数とは直接関係のない意味「たくさんの重ね」を記しています。

 

 

▽4と6は?

 「漢数字+重(え)」の まとめを 見ているときに、「1〜9のうち4と6だけない。」ということに気づいたと思います。

 上のまとめは、「辞書に見出しとして載っているもの」のみを まとめたものになります。そして、4と6は精選版 日本国語大辞典デジタル大辞泉にて、見出しがつくられていませんでした。

 

▽あえて「4と6の漢数字+重(え)」を考える

 仮に4と6の「漢数字+重(え)」の形を表すとなると…

【4】

四重(よえ)」「四重(よつえ) (四つ重(よつえ))」

 

【6】

六重(むえ)」「六重(むつえ) (六つ重(むつえ))」

などのようになると思います。

        ↑

 つまり、1〜9を再構築すると下のようになる

 

・1一重(ひとえ)」・2二重(ふたえ)3三重(みえ)

・4四重(よえ) 」・5五重(いつえ)」・6「六重(むえ) 」

・7七重(ななえ)」・8八重(やえ)・9九重(ここのえ)

 または

・1一重(ひとえ)」・2二重(ふたえ)3三重(みえ)

・4四重(よつえ) 」・5五重(いつえ)」・6「六重(むつえ) 」

・7七重(ななえ)」・8八重(やえ)・9九重(ここのえ)

 

▼「重(え)」はないけど、「漢数字+重(ジュウ)」はあるもの

 

 四重(よえ)」「四重(よつえ) (四つ重(よつえ))」、六重(むえ)」「六重(むつえ) (六つ重(むつえ))」などは、精選版 日本国語大辞典デジタル大辞泉には収録されていませんでした。

 

 音読み四重(シジュウ)」は辞書にあり、【四つ重なること。また、四つ重ねたもの。
2 《「四重禁」「四重罪」の略》仏語。4種の重罪。殺生・偸盗ちゅうとう・邪淫・妄語。】と説明されています。※出典:デジタル大辞泉小学館

 「六重(ロクジュウ)」は辞書にありませんでした。

 

 

▽「五重(いつえ)」に「5つ重ね」の意味はないの!?

f:id:peaceheart:20220210042429j:plain

 「漢数字+重(え)」の まとめの中で、1・2・3・7・8・9+「(え)」などの意味を見てみると…

 「その数字の分 重ねる」

 「その数字の回数 重ねる」

 の意味を持つことがわかります。しかし、5の「五重(いつえ)」だけは、「5つ重ね」の意味が辞書に書かれていません。

 辞書上では一重(ひとえ)二重(ふたえ)」などは「1つ重ね・2つ重ね」の意味が辞書の説明にも書かれています。重なるものが限定されていないので、意味で見れば汎用的に使えます。

 しかし、五重(いつえ)」の辞書上の説明では、「ものが5つ重なる」などの"汎用的な意味" が 書かれていません特定の物に限定されています

出典:デジタル大辞泉「いつえ〔いつヘ〕【五重】」
1 衣などを5枚重ねること。また、そのもの。「赤色に桜の―の衣」〈枕・二七八〉
2 「五重の扇」の略。

 

Q:結局「5つ重ね」の意味「五重(いつえ)」は使っちゃダメなの!?

A:気になるところといえば、間違いかどうかの話だと思います。それに関しては、間違いではないと言えます※。
 しかし、そもそも一重(ひとえ)二重(ふたえ)」以外は日常的に聞き馴染みが薄い言葉です。「(え)」単独を意味として認識している人が少ないので、「5つに重なる紙を見て」、「そこの五重(いつえ)の紙から一枚を取って!」と言っても通じない可能性は高いです。

※理由については、長くなりそうなので別記事で語る予定。

 

▽例外

 花火の用語で「五重芯」というものがあるらしく、今までの法則からいくと「いつえしん」になるはずですが、五の部分が音読みで「ごえしん」となるそうです。

出典:BS-TBS 未来へのおくりもの

https://bs.tbs.co.jp/mirai/134.html

花火で人々に感動と勇気を!「小松煙火工業」
日本最高峰の花火大会と言われている「全国花火競技大会」、通称「大曲の花火」で2013年に優勝。それも「五重芯(ごえしん)」と呼ばれ、花火の中に五重の円を綺麗に並べる .

 ちなみに、「八重芯(やえしん)、三重芯(みえしん)、四重芯(よえしん)」などは漢数字を訓読みしています。なぜ「五重芯(ごえしん)」だけ例外なのだろうか不明。

 

▼おわりに

f:id:peaceheart:20210821050046j:plain

 現代の日常生活で耳にする限界は「三重(みえ)」までだと思います。そして、その「三重(みえ)」も「三重県(みえけん)」という固有名詞での用法が9割以上で、3つ重ねの意味で「三重(みえ)」と言い表すことは少ないと思います。

 しかし、好奇心のある人であれば、「"2"が"二重(ふたえ)"なら、"7"は何になるんだろう?」みたいなことを考えるはずです。

 おそらく、その疑問はすぐに忘れて、今に至っていると思います。この記事で、その疑問が晴れれば幸いです。

 

 

 辞書上の意味をまとめたものは、下になります。

出典:デジタル大辞泉「ひとえ【一重/単】」

1 そのものだけであること。重ならないであること。「唐紙―を隔てた隣室」「紙―」 2 花びらが重なっていないこと。単弁。「―の椿(つばき)」 3 「一重瞼(まぶた)」の略。 4 「単物(ひとえも...

 

出典:デジタル大辞泉「ふたえ【二重】」

1 二つ重なっていること。また、そのもの。にじゅう。「ひもを―に掛ける」 2 「二重瞼(まぶた)」の略。 3 腰が折れ曲がること。「いといたう老いて―にてゐたり」〈大和・一五六〉

 

出典:デジタル大辞泉「ふたしえ【二し重】」

《「し」は強調の意を表す助詞》「ふたえ」に同じ。「―にさらにと分くる露なればもみづる方に宿るなるべし」〈伊勢集〉

 

出典:デジタル大辞泉「みえ【三重】」

1 三つかさなっていること。また、そのもの。さんじゅう。 2 3色の色糸で模様を織り出すこと。また、その織物。


出典:デジタル大辞泉「しじゅう〔シヂユウ〕【四重】」
1 四つ重なること。また、四つ重ねたもの。
2 《「四重禁」「四重罪」の略》仏語。4種の重罪。殺生・偸盗ちゅうとう・邪淫・妄語。

 

出典:デジタル大辞泉「いつえ〔いつヘ〕【五重】」
1 衣などを5枚重ねること。また、そのもの。「赤色に桜の―の衣」〈枕・二七八〉

2 「五重の扇」の略。


出典:デジタル大辞泉「いつえのおうぎ〔いつへのあふぎ〕【五重の扇】」

檜扇ひおうぎの一。檜ひのきの板を8枚とじたものを一つの単位(一重)とし、それを五つ重ねた扇。


出典:デジタル大辞泉「ななえ【七重】」
七つ重ねること。また、たくさんのものを重ねること。多くの重なり。しちじゅう。

 

出典:デジタル大辞泉「ななえやえ【七重八重】」
数多く重なること。また、そのもの。「―に包帯を巻く」

 

デジタル大辞泉「やえ〔やへ〕【八重】」
1 八つ重なっていること。転じて、数多く重なっていること。また、そのもの。「七重の膝ひざを八重に折る」
2 花びらが数多く重なっていること。また、その花。重弁じゅうべん。「八重の椿つばき」

 

出典:デジタル大辞泉「やえやえ【八重八重】」

幾重にも重なっていること。「おしなべて咲く白菊は―の花のしもとぞ見えわたりける」〈後拾遺・雑三〉

 

出典:デジタル大辞泉「ここのえ〔ここのへ〕【九重】」

1 物が九つ、または、いくつも重なっていること。また、その重なり。「—に霞隔てば」〈源・真木柱〉
2 《昔、中国の王城は門を九重につくったところから》宮中。禁中。「みづからは—の内に生ひ出で侍りて」〈源・少女〉
3 宮中のある所。帝都。「鄙ひなの都路隔て来て、—の春に急がん」〈謡・田村〉

 

出典:デジタル大辞泉「とえ【十重】」
物が10、重なること。「―二十重」

 

出典:デジタル大辞泉「とえはたえ【十重二十重】」

=幾重(いくえ)にも多く重なること。「見物人が―に取り囲む」

 

出典:デジタル大辞泉「はたえ【二十重】」
物がいくえにも重なること。「十重(とえ)―」

 

出典:デジタル大辞泉「ももえ【百重】」

数多く重なり合うこと。いく重にも重なっていること。「我(あ)が恋は夜昼別(わ)かず―なす心し思へばいたもすべなし」〈万・二九〇二〉

 

出典:デジタル大辞泉「いおえ【五百重】」

いくえにも重なっていること。「白雲の―に隠り遠くとも夕(よひ)去らず見む妹があたりは」〈万・二〇二六〉

 

出典:デジタル大辞泉「やおえ【八百重】」

幾重にも重なっていること。非常に遠く隔たっていること。また、その場所。「滄海原(あをうなはら)の潮の―を治(しら)すべし」〈神代紀・上〉


▼サムネに使っている画像の文字

  5  :五重(いつえ)
  9  :九重(ここのえ)
 20 :二十重(はたえ)
100:百重(ももえ)
500:五百重(いおえ)


【記事編集用Link】
https://blog.hatena.ne.jp/peaceheart/onbin.hateblo.jp/edit?entry=13574176438061440616

【KEYWORD ZONE】
かずことば、かすことは、かづことば、かつことは、kazukotoba、kadukotoba、数言葉、かづ言葉、カズコトバ、カヅコトバ
かんすうじ、かんすうし、関数氏、カンスウジ、kannsuuji、kansuuji、漢数字、肝数字