<<簡易まとめ>>
【意味の整合性が取れていない当て字】
→くり返す輪廻 【意味の整合性を取って当て字したいなら】
→輪廻
としなければいけない。【どうしても「輪廻」を使いたいなら】
「くり返す輪廻 」から「くり返す」を消す。
→輪廻
▼はじめに
"当て字"には文の構造を考えると「ヘンテコな当て字」になっていることがあります。
説明のための例として、「林原めぐみ」の「集結の園へ」という曲の歌詞の一部をあげます。
「いつかくり
返 す輪廻 」
出典:林原めぐみ/集結の園へ
↑
本来ならば
「くり返す
であるのに、
「くり返す
と表記しています。
という当て字の何が問題か見ていきましょう。
▼この部分の「いのち」を「輪廻」としてはダメな理由
▽「輪廻(りんね)」がなんだかわかってるの?
当て字で使っている2文字「輪回」からなる「
※参考:精選版 日本国語大辞典
・生死を繰り返すこと
・同じことを繰り返すこと
などが 主流の意味です。
※上2つと少し外れた意味で「執念深くすること・未練がましいこと」などの意味もある
▽「繰り返す輪廻」とは「揺れる地震」みたいな当て字
「輪廻」には「生死を繰り返すこと」の意味があるので、「輪廻」のみで「くりかえすいのち」が成り立っているのです。
・くり返す=繰り返す
・輪廻=生死を繰り返すこと
なので、「くり返す輪廻」と表記してしまうと
「生死を繰り返す繰り返すこと」みない表現になってしまいます。
【下の文を同じように当て字】
「揺れる大地 」
「悲しい出来事 」
「米 を炊く」
↓
整合性の取れない当て字
↓
「揺れる地震 」
「悲しい悲劇 」
「炊飯 を炊く」
どうでしょう? この当て字に違和感を覚えるハズです。
▽整合性を取るためには
冒頭のまとめを引用します。
【意味の整合性が取れていない当て字】
→くり返す輪廻 【意味の整合性を取って当て字したいなら】
→輪廻
としなければいけない。【どうしても「輪廻」を使いたいなら】
「くり返す輪廻 」から「くり返す」を消す。
→輪廻
この引用のように、整合性を取って当て字をするならとは「くりかえすいのち」そのものに「輪廻」と当て字をしないと整合性が取れません。
▽「重複=絶対悪いもの」というワケではないが…
和語の里の 記事の中で、「重複表現というのは別に間違いとは限らない」という話をしました。
だったら、「繰り返す輪廻」でもいいじゃないかと感じた人もいるかもしれません。
しかし、すべての重複表現がOKという話ではありまえん。
文の構造で考えたら「違和感・不自然さ・整合性のなさ」が出てしまう当て字は間違いとして認識しています。
▼おわりに
「林原めぐみ/集結の園へ」という曲の作詞は「MEGUMI」さんというかたです。
創作である以上、このかたを否定しているワケではありません。
「その当て字だと、こう見えてしまってるよ。」と伝えたいのです。
▽「いのち」というコトバを粗末にするな
「
当て字を多用する人は、「いのち」というコトバを「いのち・イノチ・命」のどれかで表記した場合、「いのち」を認識できないのでしょうか?
「
「
「
「
「
↑
こう書かないと「いのち」は「いのち」にならないのでしょうか? そんなことありませんよね。
▼オマケ「輪廻=「繰り返し」の意味なのは
「輪廻」の2文字を分けると下の意味。
・「輪」=ワ(車そのものを指す場合も)
・「廻」=まわす・まわる
参考:精選版 日本国語大辞典
漢字の意味で考えると、「(輪)ワ」が「(廻)まわる」ということです。
この「ワ」というのは、「ワ状の形のもの・丸いもの」のことです。
「ワ状の形のもの・丸いもの」には「車輪(シャリン)※」がありますね。
※wheel(ホイール)・タイヤなどとも呼ぶ。
その「車輪」が「廻(カイ・エ)」と組み合わさると「車輪が回る」の意味になります。
※ただし、これは直訳のようなもので、物理的な意味です。
「車輪が回る」の意味の広がりをまとめます。
【「車輪が回る」の意味の広がり】
・車輪一周ごとに同じ場所に戻る※
・回る限り何度でも同じ場所に戻る
↓
・繰り返すこと
↓
・繰り返す命
※イメージしにくいという人はタイヤに印を付けて、そのタイヤが回っている状態を想像してください。その印をつけた部分は一周ごとに地面に触れます。地面に繰り返し戻ってきます。
漢字ペディア「輪」
意味:①わ。車のわ。また、車。「輪禍」「車輪」 ②わのようなまるい形。「日輪」「年輪」 ③物の外まわり。「輪郭」「外輪」 ④まわる。めぐる。かわるがわるする。「輪唱」「輪番」 ⑤広大なさま。「輪奐(リンカン)」 ⑥花を数える語。「一輪」漢字ペディア「廻」
音:カイ・エ
訓:まわす・まわる・めぐる・めぐらす
意味:まわす。ぐるりとまわる。めぐる。めぐらす。「廻看」「廻風」
▼おわりに
【「くり返す(かえす)輪廻(いのち)」に似た事例の当て字】
・人の名を語る→人の名を騙る
・筆を取る→筆を執る
・しゃべる・喋る→饒舌る※S
などがあります。
これらについても、別記事でまとめるつもりです。
※S:山本周五郎の「花も刀も」で「活溌に饒舌(しゃべ)りだした」とあるが、饒舌のみでよくしゃべることを表すので、活発によくしゃべるという重複になる※重複だからミスという指摘ではない。精選版 日本国語大辞典 「饒舌」=よくしゃべることさま・多弁なことさま。
精選版 日本国語大辞典「りん‐ね ‥ヱ【輪廻】」
〘名〙 (saṃsāra の訳語「りんえ」の連声)
① 仏語。回転する車輪が何度でも同じ場所に戻るように、衆生が三界六道の迷いの世界に生死を繰り返すこと。
※文華秀麗集(818)中・答澄公奉献詩〈嵯峨天皇〉「頼有護持力、定知絶輪廻」
※苔の衣(1271頃)三「いづることなく、りんゑのきづなにまとはれて」 〔心地観経‐三〕
② 同じことを繰り返すこと。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 執念深くすること。執着心の強いこと。未練がましいこと。
※浄瑠璃・出世景清(1685)二「十蔵たもとをふりきって、ゑゑりんゑしたる女かな。そこのけとつきのけて」
④ 連歌・俳諧の付合で、三句目に同意・同想の語や意味を繰り返すこと。去嫌(さりきらい)の一つで、数句隔てて反復する遠輪廻とともに、変化を尊ぶ文芸として忌み嫌われる。
⑤ 一八九九年、アメリカの自然地理学者デービスの提唱した地形の変化についての概念。侵食輪廻や堆積輪廻など、地学現象が一定の順序で繰り返すという。
【KEYWORD ZONE】
くりかえすいのち、繰り返す命、クリカエスイノチ、kurikaesuinoti、繰り返す生命、繰り返す輪廻、
ふでをとる、ふてをとる、不手を取る、フデヲトル、筆を執る、筆を取る
ひとのなをかたる、ヒトノナヲカタル、hitononawokataru、人の名を騙る、人の名を語る