😀「コンビニ行くの? 金払うから、俺の弁当も適当に選んで買っといて!」
↑
こう言われたアナタは…
「相手に合うものを考えて買う」
「特に深く考えずに、何となくで買う」
どちらでしょう?
これは、「適当」をどういう意味として考えるかで変わってきます。 「適当」は「もとの意味」と「今大多数が多用している意味」が大きく異なります。
▼もとの「適当」の意味と、変化した用法
【もとの適当】
ふさわしい・適する・適切・うまく当てはまる・うまい具合に・ちょうどよい・程よく当てはまる…(ほか)
【変化した適当】
なんとなく・荒く・雑に・不丁寧に・不適当に…(ほか)
後者の【変化した適当】が「世間一般の大多数にとっての〝適当〟」となっています。「変化した適当=大衆的・多数派な適当」で、もとの意味の適当で使うほうが「少数派な適当」というのが現状です。※2021年
▼大衆的・多数派な「七色の適当」
大衆においての〝
※もとの意味の適当を除いて七色あります。
▽七色の適当まとめ
A:なんとなくで、深く考えずに
例「興味のないイベントの、出し物のアイディアを聞かれたので適当に答えた。」
例「俺のジュース、適当に選んで買っておいてくれ。」
※ジュースの話は後(のち)に語るEの「ランダムに」の要素も含む。
B:雑に、不丁寧に
例「適当に掃除しやがって、全然キレイになってないじゃないか。」
C:不真面目に、模範的なやり方ではないやり方で
例「あの先輩は適当だから、マネしないようにな。」
D:本気出さずに(負担にならない程度)
例「適当に作ってみたら、思いの他よくできた。」
※実際に本気出してない場合もあれば、保身的に使われてる場合もある。
例2「この作業なんだけど、適当にやってもらっていい?」
※相手に対して「負担にならない程度でいいから」のニュアンス
E:ランダムに
例「クジなんて運なんだから適当に選ぶしかない。」
※正解のないものや、規則性を出したくないときにあえて使う。
F:荒く
例「適当に扱うなよ、壊れるから。」
※Bの「雑に、不丁寧に」に近いが、こちらは壊れやすいものや、物を壊しがちな人に対して使われやすい。
G:スキマ時間にする行動の枕言葉的に使う
例「友達が来るまで、適当に宿題しとくか。」
※ここでの適当は、本気度や丁寧さなどは問わず、「ヒマつぶしがてら」という意識が無意識の「適当」という言葉を発したり、入力したりする行動を生む。
【20210710追記】H:ウソ
例「適当なこと言うな!」
※この言葉の使用状況は「相手の言うことをウソと見抜いて、または断定して言うセリフ」だ。「ウソを言うな!」というニュアンスである。
余談:追記したら「七色」じゃなく「八色」になってしまいました(笑)。
A:なんとなくで、深く考えずに
B:雑に、不丁寧に
C:不真面目に、模範的なやり方ではないやり方で
D:本気出さずに
E:ランダムに
F:荒く
G:スキマ時間にする行動の枕言葉的に使う
H:ウソ
※第八の意味を追記したら「七色」じゃなく「八色」になってしまいました(笑)。
▼それどっちの「てきとう」?
「もとの意味の適当(表意が残ってる状態)」として使う人と、「変化した適当(表意喪失状態)」で使う人が話した場合に、起こりうる行き違いの例を出してみます。
※便宜上「もとの意味の適当」を「適当」表記、「変化した適当=表意喪失状態」を「テキトー」表記します。
【テキトー上司・適当部下】
😡上司「テキトーな掃除の仕方だな!」
😆部下「ありがとうございます! (適当にやってよかった!)」
😡上司「え?」
↑
上司の人の意志としては、「表意喪失状態のテキトー」の意味で言ったつもりという例です。この時、上司の頭の中では「掃除の仕方が汚いから、もっとキレイにやれ!」という意思があって注意したのに、部下が褒められたかのような反応をしたため上司は困惑しています。
【テキトー男・適当男友達とVideo Game】
😀男「何やってるの?」
😐男友達「ABC(架空)というゲームで、ボタン押してブロックを壊すゲームだよ。」
〜数分後〜
😀男「なんか先輩がオマエを呼んでるぞ。そのゲームやっといてあげる?」
😐男友達「ありがとう。適当なタイミングで、ボタン押すんだけど、できる?」
😀男「OK!」(ポチポチポチ・・・!)
(LINE見ながら、ゲーム画面を見ずにボタン連打。
〜男友達が戻ってくる〜
😐男友達「やっててくれて、ありがとう。うん? LINE見てるぞ?」
😀男「帰ってきたか! テキトーにボタン押しといたよ。」
😐男友達「適当なタイミングは画面見ながらじゃないと、正確に押せないだろ!」
↑
男友達は、「もとの意味の適当」として、言ったつもりですが、それを聞いた男は「表意喪失状態の適当=雑に・荒く・不丁寧に」と捉えてしまった例です。そのため、
😀「画面を見ずに雑なタイミングでボタン押してればいいじゃん!」
と考えてしまったのです。
▼もとの意味での「適当」を誤解されたくない場合
相手に、自分の使いたい「適当」の種類を絶対に勘違いされたくない場合、補足を加える必要がありまあす。
【A】〝適切〟の〝てきとう〟
【B】〝適切〟の意味の〝てきとう〟
【C】〝適切〟な方の〝てきとう〟
↑
このような言い回しが補足方法になります。
▽適当の補足の例文
先生😐「〝適当〟な位置にカラーコーンをセットしてください。えっと…〝てきとう〟っていうのは〝適切〟な方の〝てきとう〟です。」
↑
先生が生徒に競争するためのカラーコーンを設置させている場面です。ゴール位置を分かるようにするため適切な位置に置かなければいけないので、補足しています。
▼変化した「適当」というのを明確にする場合
【注意】これは、どうしても勘違いされてくない場合です。基本的に「変化した適当」を一般人は使うことが多いです。 そのため、こちらも「変化した適当」の意味で使うのであれば、勘違いされることは少ないでしょう。しかし、話し相手が日本語・言語関係を気にしている人であれば、「もとの意味の適当」と捉える可能性も十分あります。
それらを踏まえた上で、次の例文を読んでください。
😐「〝ランダム〟の方の〝適当〟な感じでカードを並べてください。」
↑
これは、トランプ(カードゲーム)をしているなかで、「神経衰弱」というゲームをしている場面です。裏向きに散らばったカードたちの、どこに何の数字のカードがあるか分からないようにしてから始めるゲームです。そして、同じ数字のカードの二枚を直感と記憶で当てるものです。
そういった特性のゲームなので、「規則性」はなくさないといけません。そのために、「ランダム」という意味の〝適当〟という言葉を用いています。
※他の七色の変化した「適当」の意味でも補足で強引さが出るものもありますが、通じないこともありません。ただし、「荒く・雑に・不丁寧に」と付け加えることで、カードそのものを傷つける人もいます(笑)。
😐「〝雑に並べろ〟って言うもんだから、思い切り地面に叩きつけちゃった。テヘペロ。」
▼はじめから「適切に」と言えばいいのでは?
▽いちいち、言い直したり補足が面倒
「〝適切〟の意味での〝適当〟」のように、ひと手間かけるくらいなら、はじめから、「適切にお願いします。」と言えばいいと思います。
😐「適当にお願い。」
と頼んだあと、相手が自分の意図と異なる解釈だった場合に、
😐「待って、待って! 〝適切〟の意味での〝適当〟でよろしくね!」
と言い直すことになったら、かなり面倒くさいですよね。
▽「適当に」を使わず「適切に」などを使おう
私は「適当に」という言葉を、相手に向けて使うことはかなり少ないです。そのワケとしては、誤解を与えるからです。互いにどちらの意味で使ってるのか・どちらの意味で捉えてるのかが共有されない限り「使うのは危険」と考えています。
伝わらない言葉は使わない。
今の時代 お偉い様を敬って「貴様!」と言っても、多くの人は誤解するのと同じく、使わないほうがいいこともあります。
▽「適切」以外には?
・適切に
・正確に
・正しく
・きちんと
・しっかりと
・うまく当てはまる〜
などの表現を用いて使い分けられます。むしろ、これらを使い分けた方が日本語通っぽいのでは?
😐「〝適切〟の意味での〝適当〟に、書いてください!」
を はじめから下のように言えばよいのです。
😐「適した形で書いてください!」
😐「ふさわしく書いてください!」
など
※これを直接的と捉えられそうで「適当」という言葉に逃げよりも、勘違いを生まないことのほうが大事だと思います。
▼適当はいつから変化した?
「適当」の意味が変化した意味「雑に・不正確に・荒く」などで使われた例として1963年の「歪んだ自画像〈阿川弘之〉」の中で、「適当にインチキをされて私はいい鴨であったのかも知れない」というのが見られます。
1963年よりも前から使われていたのは確実ですが、想像しうるよりも、さらに昔からだと私は考えています。その理由として、文字書きにおいての文化的な事情にあります。
昔は文字での会話が少なかったので、漢字を見て意味を判断する機会が少なかったと考えられます。文字での会話と言ったら手紙くらいしかありません。
また、手書きはパソコン・ワープロ・スマホのように変換機能がありません。だから、「適当」の字が浮かばない人は「適当」という字を文書で使わなかったり、「てきとう・テキトウ」表記をしていたりしたと考えられます。
文字として「適当」を見る機会が、今より少なかったハズです。そうなると、漢字の表意を意識しないため、意味が変化しやすい環境となります。
昔から、変化した意味の適当が使われてるとなると、
😡「それは違うだろ!」
と注意するのも、「いまさら感」がありますし、面倒ですし、注意・周知したところで全日本人が使うのをやめません。もはや感染力の高いウイルスのごとく広まっているからです。
※どちらかというと、「もとの意味の適当は市民権が消えかかっている」と言えます。
▼「適当」の変化の起点となりそうな意味
精選版 日本国語大辞典の「適当」にて、注目すべき意味が載っていました。
③ うまくその場を取り繕い、しのぐこと〜
この意味は、もとの適当の意味の感覚を残しつつ、変化した適当につながる意味だと気づきました。
【もとの適当の意味の感覚】
「うまくその場を取り繕い、しのぐこと」というのは、「今の状況をしのぎ事なきを得るために適する行動」と考えられます。そのため、その場というのを周りの人を無視して自分の都合よく考えれば、「自分がしのぎ切ること=ふさわしい行動」とも捉えられます。
【変化した適当につながる意味】
「うまくその場を取り繕い、しのぐこと」というのは、結果的に相手に怒られなかったり、目から逃れられればいいという考えです。そのやり方として、「雑でもいいから、道徳的に良くなくてもいいから(規範的ではなくてもいいから)」などの方法が取れるため、今大多数が使っている「変化した適当」の意味に派生すると考えられます。
▼勝手に推測「七色の適当」が生まれたワケと流れ
【注意】
言葉の移り変わりは、「地域による広がり方の差」などもあります。ここでの流れや派生理由は前後差がありますし、推測なので根拠のある情報ではありません。あくまでも、ネタとして読んでください。
【「適当」の誕生!!】
「適当」が「ふさわしい・適する・適切な・ちょうどよく・うまく当てはまる」などの意味で使われる。
↓
「うまい具合に・程よく」などの多少、軽い表現としても使われる
↓
「適切・ふさわしい」を自分都合として用いることで、「うまくその場を取り繕い、しのぐさま」の意味でも使われる。
↓
(適当の意味の変化の大きな境界線)
↓
自分都合として使う機会が増えたことで、「雑に、不丁寧に、荒く、不真面目に、模範的なやり方ではないやり方で」などの意味でも使われる。
↓
雑なさまや荒れてる様は、不規則なさまであることから「ランダムに」の意味でも使われる。
↓
不丁寧・不真面目なさまから、「本気出さずに、なんとなくで、深く考えずに」などの使われ方がされる。
↓
「本気出さずに、なんとなくで」の意味からか、スキマ時間にできる何気ないことを連想してか、「スキマ時間にする行動の枕言葉的に使う」という用法も生まれる。
もとは「深く考える方面の意味」だったのが、真逆にまで派生して「なんとなくで、深く考えずに」などの意味でも使われ、「スキマ時間にする行動の枕言葉的に使う」とまで行くと、もはや今後「どのように変化しても不思議ではない」と言えます。
【余談】
変化した適当の意味で使うなら、個人的に表記は「テキトー」など、漢字を用いない形のほうが好きです。しかし、Youtubeのテロップを見てると〝
多少の多さは、わかっていますが圧倒的に漢字表記が多い理由は、おそらくですが、AIによる音声認識を用いた入力によるものだと考えられます。
タイトル・文中に含まれている「表意喪失」という和語の里作用語については、別の記事で個別に解説予定です。
▼おまけ:「適当」と似た境遇の「いいかげん」
適当のように表意喪失した使われ方をする言葉は、他にもあります。その中で、有名所かつ多用されている言葉といえば「いいかげん」です。
もとの意味である表意文字が機能した「好い加減・良い加減」の意味は、「程よい具合・加減の調整ができている」という意味です。しかし、多くの人が多くの場面で用いる使い方は表意喪失した意味の「不丁寧に・雑に・途中で投げ出すさま・無責任」という意味です。
▽辞書ですら表意喪失の「いいかげん」を頼っている
辞書の「好い加減」自体の説明には、もとの意味も載っています。そして、表意喪失した意味・変化した意味の「途中で投げ出すさま・無責任・投げやり・おざなり」などの意味も載っています。※1
ここまでは、良いとして…
辞書にも問題があります。「いいかげん」以外の言葉の説明の中に「いいかげん」「いい加減」が使わているということです。
※「良い加減」は使われていませんでした。Link
※「好い加減」は言葉の意味の説明では使われていませんでした、使われてるのは例文のみ。Link
デジタル大辞泉「なおざり」の説明の1では「いいかげんにしておくさま。本気でないさま。おろそか。」という説明があります。Link
このときの「いいかげん」は、「もとの意味の〝いいかげん〟」ではなく、「不丁寧に・雑に」などの意味です。つまり、「なおざり」の「いいかげんにしておくさま。」というのは、「不丁寧に行うさま。」と置き換えられます。
※他にも、デジタル大辞泉「雑(ざつ)」の説明に「いいかげん」が使われています。
※説明に使われている言葉を検索するLink「いいかげん」「いい加減」
kw:ひょういそうしつ、ひよういそうしつ、ヒョウイソウシツ、"憑依喪失"、"表意喪失"、hyouisousitu、非用意喪失
画数と漢字。"てきとう"を"適当"の意味で使っても"テキトー"になる現象。
kw:適当 誤用、てきとう ごよう、てきとう 誤用、適当 御用、テキトー 誤用、テキトー 御用、tekitou goyou、
kw:適当の意味、てきとうのいみ、テキトウノイミ、tekitounoimi、てきとうの意味、テキトウの意味、テキトーの意味