和語の里(Wagonosato) - 日本語・データ化・考察 -

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【辞書データ】細工・不細工など

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さいく

精選版 日本国語大辞典「さいく【細工】」
〘名〙 (「く」は「工」の呉音)
① もと、内匠寮(たくみりょう)に属し、作物所(つくもどころ)で働いていた職工をいう。小道具、調度など細かい物を作る職人。細工人。
※観智院本三宝絵(984)中「細工をやとひ据ゑてはこぞつくりいださしめたるに、経は長く、はこは短うして入れ奉るに足らず」
② (━する) 木工、彫金など手先を利かせて細かい物を作ること。また、そのもの。手細工。
※栄花(1028‐92頃)御裳着「昔賀陽親王(かやのみこ)といひし人こそ、さいくはいみじかりけれ」
③ (━する) 工夫すること。たくらむこと。また、そのもの。くわだて。計画。
※今昔(1120頃か)二八「此の為盛の朝臣は、極たる細工(さいく)の風流有る者の」
俳諧去来抄(1702‐04)修行「二度目に鮎一つは少なきことにや。皆是細工せらるる也」
④ (名詞の上に添えて) 本格的でない、素人が器用だけでするの意を表わす。「細工絵」「細工芸」「細工浄瑠璃」「細工剃」など。
⑤ 江戸時代、竹細工、箒、茶筅などを作って売り歩いた下層の人をいう。
浄瑠璃・都の富士(1695頃)四「老母いたはる世のたつき夫婦勝若諸共に、さいくの者と品くだり」

 

ぶさいく

精選版 日本国語大辞典「ぶさいく【不細工・無細工】」
〘名〙 (形動)
① 細工がまずいこと。てぎわが悪いこと。不器用なこと。また、そのさま。〔日葡辞書(1603‐04)〕
体裁が醜いこと。かっこうが悪いこと。ぶかっこう。また、そのさま。ぶざま。
俳諧・誹諧曾我(1699)兄「不細工に柘榴の花も咲にけり〈白雪〉」
③ 容貌が醜いこと。また、そのさま。不器量。

※雑俳・二刀(1716‐36)「不細工な顔にはついへおほしくて」

 

 

 

こざいく

精選版 日本国語大辞典「こざいく【小細工】」
〘名〙 (「こ」は接頭語)
① こまごました手先の細工。ちょっとした手先の仕事。
浮世草子・日本永代蔵(1688)三「家業の外の小細工、金の放目貫(はなしめぬき)」
② 一時しのぎの効果しかない方策や手段。
黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一「其様(そん)な小細工で天下の耳目を蔽ふことは出来ない」

 

てざいく

精選版 日本国語大辞典「てざいく【手細工】」

〘名〙
① 手先でする細工(さいく)。また、それを業とすること。手工。手わざ。
寛永刊本蒙求抄(1529頃)八「有手技とは手ざいくを一づつしならわすぞ」
② しろうとのじょうずな細工仕事。また、そのもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※雑俳・折句大全(1803)「手細工のやうにはないと悦ばせ」
手淫
浮世草子・好色大富帳(1697)二「むなしくきざすしたたかものを、おのが手さいくにらちあけて」

 

さいくむ

精選版 日本国語大辞典「さいくむ【細工】」
〘他マ四〙 細工をする。くふうを凝らす。技巧を凝らす。修飾を施す。
静嘉堂文庫本無名抄(1211頃)「それを、あまりさいくみてとかくすれば

 

ちょうきん

精選版 日本国語大辞典「ちょうきん【彫金】」

〘名〙 金属彫刻の一技法。工具のたがねを金槌でたたきながら金属面に彫刻を施していく。
※抱擁(1973)〈瀬戸内晴美〉序「引出しにも薔薇の彫り物をした彫金の把手がついていた」

 

ていさい

精選版 日本国語大辞典「ていさい【体裁】」

〘名〙
① 外から見たときの感じ。様子。外観。
※松山集(1365頃)蒲団「錦茵繍褥付二塵埃一、実相円成有二体裁一」
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉七「威勢よく席を譲ると、うらなり君は恐れ入った体裁で」
② 詩文の格式。また、しっかりと整った形式。
※古文真宝桂林抄(1485頃)乾「荊公の論は体さいを先に云ほどにぞ」 〔沈約‐謝霊運伝論〕
③ 他人から見られた時のかっこう。みえ。面目。
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一七「談話応接多くは其体裁を失ふ」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉三「あんまり体裁(テイサイ)のいい話じゃないヨ」
④ 顔つきや口先だけで他人の気に入るようなふるまいをすること。
人間失格(1948)〈太宰治〉第三の手記「男はたいてい、おっかなびっくりで、おていさいばかり飾り」

 

精選版 日本国語大辞典「たいさい【体裁】」
〘名〙 ⇒ていさい(体裁)

 


精選版 日本国語大辞典ありさま【有様】」

〘名〙
① 外から見ることのできる、物事の状態。様子、景色、光景、また、人の容姿、態度など。
※土左(935頃)承平五年二月一六日「家にいたりて門(かど)に入るに、月あかければ、いとよくありさま見ゆ」
※イタリアの歌(1936)〈川端康成〉「赤く膨れて崩れた顔は、〈略〉化物じみたありさまだった」
② そのものがおかれている状態。人の身分、境遇など。
※源氏(1001‐14頃)宿木「数ならぬありさまなめれば、かならず、人笑へに、憂き事いでこんものぞ」
③ 一見しただけではわからないような、物事の事情。実際の状態。実情。また、物事のくわしい様子。詳細。
伊勢物語(10C前)二一「出でていなば心軽しといひやせん世のありさまを人は知らねば」
地蔵菩薩霊験記(16C後)二「罪障のほど犯科の分野(アリサマ)を乞受け給ふ」
④ 物事の状態と、それから感じとられる気配。形勢。また、物事の変わっていこうとする様子。情勢。
太平記(14C後)一一「只今打ち立たんずる形勢(アリサマ)にて、楯を矯(はが)せ、鏃(やじり)を礪(と)ぐ最中也」
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉二「両人を取巻て手込になさん形相(アリサマ)なるにぞ」

 

精選版 日本国語大辞典「ありよう【有様】」
〘名〙
① 事物の状態。様子。ありさま。あるよう。なりゆき。
※土左(935頃)承平五年一月一一日「人皆まだ寝たれば、海のありやうも見えず」
※宇治拾遺(1221頃)四「まづ篤昌(あつまさ)がありやうをうけたまはらん」
② 状態の原因。事情。理由。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「『なぞかく申す』とて御随身問へば『〈略〉さらせ給なん時、ありやうは申さん』とていへば」
③ 偽りや、飾りのない、そのままのありさま。実情。ありのまま。あるよう。ありてい。
※玉塵抄(1563)三「正直にかざらずありやうにしるいたぞ」
④ (「ありよう(有様)は」の形で用いて) 実際のところは。本当のところは。
浄瑠璃・新うすゆき物語(1741)中「有り様はおれも逢たい見たい」
⑤ あるべき様子。また、あるべき理由。あるわけ。「この会のありよう」「ありようがない」

 

精選版 日本国語大辞典「あるよう【有様】」
〘名〙
① =ありよう(有様)①
※源氏(1001‐14頃)総角「旅の宿りのあるやうなど、人の語る思しやられて、をかしく思さる」
② =ありよう(有様)②
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「この君は、あるやうありてやかくこもりゐ給つらん」
※能因本枕(10C終)四四「梨の花〈略〉もろこしには限りなき物にて文にも作るなるを、さりともあるやうあらんとて、せめて見れば」
[語誌]本辞典では名詞としたが、「ありさま」「ありよう」が一語として意識されていたのに対し、この語は二語として意識されていたのではないかと思われる。したがって、「有」「在」の実質的な意味が失われずに用いられている例が多く見られる。中古以降「ありよう」に吸収されたと考えられる。