和語の里(Wagonosato) - 日本語・データ化・考察 -

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【非活用語の送り仮名】「概ね」表記は「魚な・湖み・帝ど」みたいな表記である【日本語の問題点】

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・「〇〇へのワクチン目標概ね達成」@テレ朝news

・「留学生は授業の82%に概ね満足〜」@早稲田大学

 新聞・TVニュース・ネット記事などで、やたらと目にする「おおむね」という言葉。「だいたい」「その中の多くは」の意味で使われることが多い言葉です。
※前者と比べ使用頻度は少ないが「趣旨」の意味でも使う。

 

▼「概ね=非活用語の送り仮名」

 おおむね」という字面が気になってしょうがないのですが、なぜかというと「ね」は「送り仮名」にあたる位置にあります。
 しかし、概ね」を「概ぬ・概な」などと活用することはありません。

 このように、活用しないコトバの漢字でも送り仮名をつけるというのが、文化庁で説明されています。
※たとえば、第4期国語審議会「送りがなのつけ方」について(建議)など。


https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/04/tosin01/index.html
出典:文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 第4期国語審議会 | 「送りがなのつけ方」について(建議)
>>副詞は最後の1音節を送る。
>><例>
>> 必ず 少し 再び 全く 最も
>>ただし,次の語はその前の音節から送る。
>> 直ちに

▼大多数の送り仮名とは区別したい

 こういった「概ね」の「ね」部分の送り仮名は、よくある「楽しい・狩る」の「しい・る」などのような送り仮名とは異なります。
 送り仮名ではあるものの、性質が異なるので、呼び方を決めておいたほうがいいでしょう。その呼び方として、和語の里で用いるのが非活用語の送り仮名ひかつようごのおくりがなです。

▼非活用語の送り仮名

 「概ね」風の送り仮名が増えてしまった平行世界の「Another Japan」では、こんな気持ち悪い表記が蔓延しているかもしれません。※参考:【(連語の)1漢字化 辞典】

 

(さか)な」

酒菜(さかな)」→「(さかな)」→疑似「(さか)な」

 

黄昏(たそが)れ」

誰そ彼(たそかれ・たそがれ)」→「黄昏(たそがれ)」→疑似「黄昏(たそが)れ」

 

(みか)ど」

御門(みかど)」→「(みかど)」→疑似「(みか)ど」

 

(みずう)み」

水海(みずうみ)」→「(みずうみ)」→疑似「(みずう)み」

 

  「さかな」を「(さか)な」と書くのは変な感じしますよね。
 その変だと感じたと同じくらい、「おおむね」を「概ね」と表記するのは変な表記なのです。
 しかし、そのような送り仮名にするように文化庁が示しているため、浸透していっています。


 

 

▼多く送り仮名による先入観

 送り仮名がついてると、どうも「活用するコトバなのだろう。」と感じてしまいます。
 そのため、「概ね」というコトバを知らず、「概ね」という表記を はじめて見た人は「概ぬ・概な、みたいに活用するコトバなのかな?」と感じてしまいます。

 

▽活用以前に「おおむね(大旨・概)」は名詞

 まず、事前説明として、「おおむね」は「大旨」からなる言葉で、構成語「むね(旨)」も「名詞」です。当然、「大旨・概ね」も名詞ですので活用はしません。

出典:精選版 日本国語大辞典「おお‐むね おほ‥【大旨・概】」

[1] 〘名〙 物事の最も重要な部分。また、大体の主旨。主たること。
※書紀(720)推古一二年四月(寛文版訓)「三宝は仏(ほとけ)・法(のり)・僧(ほうし)なり。則ち四の生(うまれ)の終の帰(よりどころ)、万国の極宗(ヲホムネ)なり」
[2] 〘副〙 おおよそ。だいたい。あらまし。
大日経義釈延久承保点(1074)四「其の形(かた)ち大抵(オホムネ)相ひ似たり」

 

▼「非活用語の送り仮名」他には?

▽「殆ど」も

 実は「ほとんど」という言葉は・・・

「ほとほと」

→「ほとほど・ほとをと(ほとおと)」

→「ほとんど」

 という形で、変化した言葉です。そして、もとの「ほとほと」の「ほと」は、「ほとり(辺り)」の「ほと(辺)」です。それの畳語「ほとほと(辺辺・辺々)」が、ナマリにより、「ほとんど」となって、今に至ります。

※出典・参考:精選版 日本国語大辞典「ほとほと 殆・幾」の[語誌](3)

院政期から鎌倉時代にかけて「ほとほど」「ほとをと」となり、室町中期以降「ほとんど」の形をとり、今日に至る。

 

ほとほと(辺辺・辺々)

ですから、活用をしない言葉というのがわかります。しかし、「殆」を当て字で用いてから、「ど」という「送り仮名」が表記されています。

※他の【非活用語の送り仮名】については、

↑この記事で説明。

 

 

 

【KEYWORD ZONE】

"ニセ送り仮名"2件だが、誤表記の意味で使われている。

"偽送り仮名"0件

"似せ送り仮名"0件

"贋送り仮名"0件

"にせ送り仮名"0件

"似非送り仮名"0件

"似而非送り仮名"0件

"疑似送り仮名"0件

"おおむね"

"概ね"

"大胸"

"大棟"

"大旨"

"大胸ね"

"大棟ね"

"大旨ね"

"大むね"

"多旨"

"大ムネ"

"大宗"

"オオムネ"

"おお旨"

 


"非活用語送り仮名""非活用送り仮名"0ken 

"非活用語の送り仮名"

 

【余談】

 "非活用語の送り仮名"という言葉を使っている人はいるのか検索してみた。
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/honbun03.html
http://jgrammar.life.coocan.jp/ja/hyouk021.htm