▼はるか遠くにいる君
こういった表現を使っている作品(特に歌詞)は多いと思います。この中に含まれる大和言葉の「はるか(遥か)」に注目します。
同じく「はるか彼方」もよく聞きます。
はるか遠く・はるか彼方
この「はるか」そのものに
[遠く]の意味があったんです。
辞書にて、こう記されています
遥か(読み)ハルカ
×遥かはろか
[形動][文][ナリ]
1 距離が遠く隔たっているさま。「富士山を遥かに望む」
2 年月が長く隔たっているさま。「遥かな昔」
3 違いのはなはだしいさま。「こちらのほうが遥かによい」
4 うとましく思うさま。気や心の進まないさま。
「いと―にもてなし給ふ愁(うれ)はしさを」〈源・蛍〉
[副]
1 1に同じ。「遥か北の国」
2 2に同じ。「遥か以前」
出典 小学館デジタル大辞泉
- ▼はるか遠くにいる君
- ▼重複というワケではありません
- ▼「はるか-遥か」単独で使ってみる
- ▼単独で使わず、[はるか遠く・はるか彼方]を使いすぎていた
- ▼死語・古語という概念は危険
- ▼日本語解説でも気をつけたい
- [はるか]に関わる日本語を さらに知りたい勤勉家のためのまとめ
- おまけ:写像問題を紹介
▼重複というワケではありません
「はるか遠く=遠く遠くで重複なの?」
「辞書の[意味3]に「違いのはなはだしいさま」とあります。カンタンに言うと
・すげー〇〇
・とても〇〇
っていうことです。」
「はるか遠く=[すげー遠い]ってことか!・・・でも、[遠い]って意味があったと思わなかったよ。」
▼「はるか-遥か」単独で使ってみる
「イナカ から、遥かなる(はるかなる)場所・世界で輝きたい!」
「私の目指す場所は、遥かだが・・・夢を見続ける!」
↑
これは
「イナカモンが夢を見て [遠くの国で活躍したい!]という気持ちを表したもの」です。
このように使う場合、「はるか(遥か)」は「遠く」の意味を持ちます。
「イナカ から、遥かなる(はるかなる)場所・世界で輝きたい!」
↓意味
「イナカ から、遠い場所・世界で輝きたい!」
「私の目指す場所は、遥かだが・・・夢を見続ける!」
↓意味
「私の目指す場所は、遠いが・・・夢を見続ける!」
▼単独で使わず、[はるか遠く・はるか彼方]を使いすぎていた
[遠くを表現]したいとき、
みなさんは[遠く]って言葉を
使いますよね(笑)。
シンプルにそれが理由だと思います。
「遠く」を表現したいとき[はるか]単独で使う人が少ないし、[遠く]で事足りてしまうから、「〝はるか=遠く〟という意味がある」というのを知らないのです。知る必要がないから・・・
▼死語・古語という概念は危険
たとえば、[写像]という言葉がありますが・・・
※勝間和代と西村ひろゆきが行った対談:写像問題※下に飛びます
普通の会話の中では、「写像」を 使うことはありません。
だからと言って「写像 = 死語」になりません。
[伝わりにくい]を理由に、言葉を[死語]として扱うのは危険です。
・難読漢字すべて死語
・難しい言葉すべて死語
・専門用語すべて死語
↑
そんなこと言ったら 日本国民すべてが「やべえ!」しか使わなくなりそうです(笑)。
だから、私は耳慣れない言葉を耳にしたとき、[死語という概念]で見ることを 控えています。
▼日本語解説でも気をつけたい
[Kさん(仮)]が経験をもとに
記事を書いたとしてます。
「この言葉(A)は 今はこの意味では使わない。 by K」
ここで恐ろしいことが起こります。
その記事を読んだ人は
どんなことを考えますか?
・・・
・・・
「Kさんの言う通り、
(A)は死語・古語だ!
使うの やめよう!」
つまり・・・
何気なく書いた記事によって
言葉を殺します。
ちなみにマナー講師は自分の利益のために
・意味を殺す
・言葉を殺す
・文化を殺す
という3点キラーセットなので、破壊神ビルス顔負けの「Destroyer(デストロイヤー)」っぷりです、気をつけましょう(笑)。
[はるか]に関わる日本語を さらに知りたい勤勉家のためのまとめ
あとは、全く面白さはなく、ただただ辞書の情報を集めたものとなっています。
出典:学研全訳古語辞典
はる-け・し 【遥けし】
形容詞ク活用
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①(空間的に)はるかだ。遠い。
出典源氏物語 賢木
「はるけき野辺を分け入(い)り給(たま)ふよりいとものあはれなり」
[訳] (嵯峨野(さがの)の)はるか遠い野のあたりを(源氏が草を)分けてお入りになるやいなや、とてももの寂しい。
②(時間的に)遠い。久しい。ずっと先だ。
出典古今集 物名
「人目ゆゑ後に会ふ日のはるけくは」
[訳] 人目がはばかられるので、この次に会う日がずっと先になったら。
③(心理的に)隔たっている。
出典古今集 恋五
「思はぬ仲ぞはるけかりける」
[訳] 互いに思っていない男女の仲は心が隔たっているものだったなあ。
遥=はる・はろ?
出典:デジタル大辞泉(小学館)
はろ‐け・し【遥けし】 の解説
[形ク]「はるけし」の音変化。
これを見る限り
はるけし→はろけし
というナマリが起きることがあったようです・
「遥に」の用法もあった
はる【×遥】 の解説
[形動ナリ]遠くまで眺望が開けているさま。はるか。多く「目もはるに」の形で「芽も張る」の意にかけて用いている。
「紫の色濃き時は目も―に野なる草木ぞわかれざりける」〈伊勢・四一〉
出典:学研全訳古語辞典
はる-か・なり 【遥かなり】
形容動詞ナリ活用
活用{(なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ)}
①遠く離れている。ずっと遠い。▽距離的・空間的に隔たっているようす。
出典更級日記 子忍びの森
「ありありてかくはるかなる国になりにたり」
[訳] とどのつまり、このような遠く離れている国の国司になってしまったのだ。
②ほど遠い。ずっと将来である。▽時間的に隔たっているようす。
出典枕草子 ゆくすゑはるかなるもの
「ゆくすゑはるかなるもの。…生まれたる稚児(ちご)の大人になる程」
[訳] 将来がほど遠いもの。…生まれた赤子が大人になるまでの間。
③気が進まない。その気になれない。うとましい。▽気分的に隔たっているようす。
出典源氏物語 桐壺
「大床子(だいしやうじ)の御膳(おもの)などは、いとはるかにおぼし召したれば」
[訳] (悲しみから)大床子の御膳(=天皇の昼の正式の食事)などは、とてもその気になれない(=食べる気になれない)とお思いになっているので。
④(程度が)甚だしい。
出典徒然草 一八四
「皆を張りかへ候はんは、はるかにたやすく候ふべし」
[訳] (障子の紙の)全部を張りかえますなら、そのほうがはなはだ容易でございましょう。
か‐な‐た【▽彼▽方】 の解説
[代]遠称の指示代名詞。
1 話し手・聞き手の双方から離れた場所・方向をさす。また、現在から遠く離れた過去・未来を示す。あちら。あっち。「彼方の山」「忘却の彼方」2 ある物に隔てられて見えない場所・側などをさす。向こうがわ。「山の彼方」「海の彼方の国」
[補説]書名別項。→彼方
おまけ:写像問題を紹介
「デキビジ」2010年05月02日(日)夜08時~BS-Japan
ひ:インターネットの話はインターネットの話をしてください。なんか、今リアルの話にしたの勝間さんですよね。
勝:いや、リアルの話に対してインターネットが写像(捨象?)であるということに、何故ですね・・・
ひ:シャゾウ? 何ですかシャゾウって?
勝:だめだこれ(笑)。
ひ:ああ、すいません。なんか、言葉知らなくて。
勝:あの多分ですね、
ひ:なんか、あのよく分からない、例えばシャゾウって言葉の意味僕知らないんですけど、一般的にもそんなに常識的な言葉じゃないですよね。それを持ち出してダメだこりゃって言われても、確かに僕ボキャブラリ少ないかもしれないけどそれをなんか呼んだ人に対して失礼じゃないですか?
kw:はるか ハルカ 遥か 春香 遥 遙華 春か 関空特急 haruka