▼ 事典=事柄・辞典=言葉・字典=文字
[事典] もの図鑑・事柄
※例:昆虫事典・乗り物事典・医学事典、百科事典
[字典] 文字・漢字
※例:漢字字典、かな字典
[辞典] ことば ※定義があいまい
※例:国語辞典、ただし[辞典]表記は広義で使われやすく内容が[事典・字典]でも用いられたりする。
[定義上の最大解釈]=じてん・じしょ 全般
[定義上の大きい解釈]=じてん 全般
[定義上の小さい解釈]=辞典・字典
[定義上の最小解釈]=言葉を調べる書物
※下記の説明では[字典・辞典]が近しい扱いです。
じ‐てん【辞典】 の解説
言葉を一定の順序で配列し,解釈や説明などを加えた書物。文字に重点をおいたものを字典あるいは辞典といい,事物に重点をおいたものを事典といっている
【”じしょ”の種類と例】
[字書] 漢字
※例:中国古代字書、ゆたかな心をつくる一字書、五體字書
[辞書] 一般的には[ことば]※定義により様々
[定義上の最大解釈]=じてん・じしょ 全般
[定義上の最小解釈]=言葉を調べる書物
[辞書と字書] ことば・漢字
字書と辞書が一緒に入ってる書物もある、その例が漢和辞典です。『漢和辞典は、字書と辞書の両方の性質をもつ』というのが基本のようです。
[事書] なし※調査中
[事典の意味での”事書”]は見当たらず。
”じてん”読み方で区別、別名も
・事典=ことてん
・辞典=ことばてん
・字典=もじてん (別名:じびき-字引)
※区別するために使う読み方、読み方というよりは呼び方といったほうが正しく、実際にルビをふるなら[じてん]でふります。会話上で相手に伝えるための呼び方の使い分けというべきでしょう。国語辞典を[こくごことばてん]とは読まない。
【事典】
(出典 デジタル大辞泉@小学館:https://daijisen.jp/digital/)
こと‐てん【事典】
「じてん(事典)」に同じ。言葉の解釈を主とする「辞典(じてん)」に対して、事物の説明をするものを「事典(じてん)」と書くようになり、この二つを区別して呼ぶために生じた語。→言葉典(ことばてん) →文字典(もじてん)
じ‐てん【事典】
百科事典や専門語辞典など、語を手がかりとして、それを名目とする事柄の内容を知らせる辞書。ことてん。
【字典】
(出典 デジタル大辞泉@小学館:https://daijisen.jp/digital/)
漢和辞典や漢字字典など、語の表記単位である文字、特に漢字を登録した辞書。
漢字を一定の順序に並べ、その発音・字源・意味・用法などを説明する。
字書。字引(じびき)。もじてん。
辞とは
「”辞める(やめる)”の意味」でも「辞典」でも使う漢字です。
「どっちか意味が誤用なのか?」
それを確かめるために調べてみました。
【中国語の”辞(辭・辤)”】
1付属形態素 言葉遣い,言い回し,語句.
2名詞 古典文学の文体の一つ.
3名詞 古体詩の一つ.
1付属形態素 暇乞いする,別れを告げる
2動詞 丁寧に断わる,辞退する.
3動詞 辞職する,辞める.
4動詞 解雇する,辞めさせる.
5文語文[昔の書き言葉]:避ける,嫌がる,(言い訳をして)断わる
【日本語の”辞”】
(出典 デジタル大辞泉@小学館:https://daijisen.jp/digital/)
1 ことば。「歓迎の辞」
2 漢文の一体。楚辞の系統をひく様式で、押韻して、朗誦に適した文。陶淵明の「帰去来辞」など。
3 単語を文法上の性質から二つに分類したものの一。詞 (し) に対する。単独では文節を構成しえず、常に詞(自立語)に伴って文節を構成する語。助動詞・助詞がこれに属する。時枝誠記 (ときえだもとき) の学説では、助動詞・助詞のほか、接続詞・感動詞などもこれに含まれる。
・中国語と日本語ともに「辞める(やめる)」の意味
・中国語と日本語ともに「言葉(ことば)」の意味
「辞典」を構成する辞の意味に対応する「ことば(語句)」という意味も含んでいます。つまり、誤用ではありません。まあ辞書を作ってる人たちが誤用してるわけないですよね。
結局あやふや[じしょ・じてん]の定義
「辞書は辞典(ことばてん)・事典(ことてん)・字典(もじてん)に分類されるが、現実に刊行されている辞書の書名では、これらが明確に使い分けられているとはいえない。」
↑
これを考えると
・辞書という枠組みの中に[事典・辞典・字典]がある
・出版側もきちんと明確に使い分けているとはいえない
ということが読み取れます。
【辞書とは?】
(出典 デジタル大辞泉@小学館:https://daijisen.jp/digital/)
1 多数の語を集録し、一定の順序に配列して一つの集合体として、個々の語の意味・用法、またはその示す内容について記したもの。語のほかに接辞や連語・諺なども収める。また、語の表記単位である文字、特に漢字を登録したものも含めていう。辞書は辞典(ことばてん)・事典(ことてん)・字典(もじてん)に分類されるが、現実に刊行されている辞書の書名では、これらが明確に使い分けられているとはいえない。辞典。字書。字引(じびき)。
2〜以下略
【字書とは?】
①漢字を一定の順序に並べ、その音・意味・字源などを解説した書。
[基本例]「字書で漢字の意味を調べる。」※漢和辞典は、字書と辞書の両方の性質をもつので、字書・辞書の両者を用いる。
②【辞書】に同じ。
[類語]字典。字引。辞書。
自分の職場環境が使い分けを徹底している環境なら使い分ける。
自分の環境が使い分けを気にしない環境であれば、
『じてん・じしょ 全般を”辞書”と書くこと』
で問題はないでしょう。
定義を参照する所によって定義の説明が違うなら、
環境の違いによって定義が変わるということ。
しかし、気をつけるべきは[定義がしっかりしている表記]です。[事典・字典]自体は定義がある程度しっかりしています。あえて[じてん]を[事典・字典]と書くなら、定義に沿った使い方をするべきです。
でも、やはり・・・
こんだけ日本語が複雑なのだから、表記が自分たちの環境において間違いだったとしても怒るのではなく、[うちではこうだから]と言ってあげるべきです。むやみやたらに同音異義語を作った人間が一番罪深いと思ってます、せめるなら昔の政治家・翻訳家などです。同音異義語で煩わしいと思う国民が犠牲者側なのです。
日本人が日本語を大事にしないのは、日本語マウンターの存在のせいです。面倒くさい言語なんて国民全般に愛されません。注意する側は指摘方法に気をつけてほしいものです。
余談ですが、ネット社会により金儲けに走るため「個人辞書」が増え、「ソースを明かさず言葉を説明」する危険な勢力がいます。出版社の辞書づくりの大変さの一部は「舟を編む」という作品で知りました。
そういう大変な作業で作られ、責任感のある出版の辞書・大手辞書に敬意を称したいです。